童話村の森ライトアップ
銀河鉄道の夜
宮 沢 賢 治 た。あっちにもこっちにも子供が瓜 うり
に飛びついたときのやうなよろこび
の声や何とも云ひやうない深いつゝ
ましいためいきの音ばかりきこえま
した。そしてだんだん十字架は窓の
正面になりあの苹 りん果 ごの肉のやうな青
じろい環の雲もゆるやかにゆるやか
に繞 めぐってゐるのが見えました。
「ハルレヤハルレヤ。」明るくたのし
くみんなの声はひゞきみんなはその
そらの遠くからつめたいそらの遠く
からすきとほった何とも云へずさわ
やかなラッパの声をききました。そ
してたくさんのシグナルや電燈の灯 あかり
のなかを汽車はだんだんゆるやかに
なりたうたう十字架のちゃうどま向
かひに行ってすっかりとまりました。
銀河鉄道の夜
九‒
ジョバンニの切符より抜粋 「さあもう支度はいゝんですか。ぢ
きサウザンクロスですから。」
あゝそのときでした。見えない天
の川のずうっと川下に青や橙 だいだいやもう あらゆる光でちりばめられた十 じゅう字 じ架 か
がまるで一本の木といふ風に川の中
から立ってかゞやきその上には青じ
ろい雲がまるい環 わになって后光のよ
うにかかってゐるのでした。汽車の
中がまるでざわざわしました。みん
なあの北の十字のときのやうにまっ
すぐに立ってお祈りをはじめまし
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